第62回 国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール
- 第62回(平成27年度) 入賞者発表 -
賞 | 受賞者/演題 |
外務大臣賞 |
富山県立中央農業高等学校 中西 明生さん 創設70周年を迎えた国連の使命と国連における日本の役割 -Action, not words!- |
法務大臣賞 |
長崎県立長崎北陽台高等学校 牟田 麗さん 創設70周年を迎えた国連の使命と国連における日本の役割 |
文部科学大臣賞 |
関西創価高等学校 小西 沙織さん 世界の平和と安定のために、日本が国連の中で果たすべき役割 |
公益財団法人 日本国際連合協会会長賞 |
広島女学院中学高等学校 植田 愛佳さん 世界の平和と安定のために、日本が国連の中で果たすべき役割 |
全国人権擁護委員連合会 会長賞 |
福岡女学院高等学校 山崎 菜々花さん 世界の平和と安定のために、日本が国連の中で果たすべき役割 - 被爆国としての立場と先進国としての立場から平和のとりでを築く- |
公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟会長賞 |
仙台白百合学園高等学校 武田 悠さん 世界の平和と安定のために、日本が国連の中で果たすべき役割 -誰もが天使になれると信じて- |
日本ユネスコ 国内委員会会長賞 |
宮崎県立妻高等学校 宮路 玲加さん 世界の平和と安定のために、日本が国連の中で果たすべき役割 -「誠」の心を世界へ- |
公益財団法人 安達峰一郎記念財団賞 |
静岡サレジオ高等学校 袴田 実柚さん 世界の平和と安定のために、日本が国連の中で果たすべき役割 -分かち合う世界になるために- |
日本放送協会会長賞 |
岩手県立盛岡農業高等学校 村木 風文さん 地球環境への国連の取り組みに、日本が協力出来ること -生態系を保全する私の使命と決意- |
国際連合広報センター賞 |
私立ラ・サール学園高等学校 宮﨑 柊人さん 創設70周年を迎えた国連の使命と国連における日本の役割 |
入賞作品紹介
創設70周年を迎えた国連の使命と国連における日本の役割
― Action, not words! ―
外務大臣賞
富山県立中央農業高等学校 3年 中西 明生
Action, not words! 「言葉ではなく、行動を」これが私のモットーです。私が農業を通じた国際貢献に取り組みたいと思ったのは、JICA主催の農村振興研修で、ギニア、ニジェールなどアフリカから来た方々と出会ったのがきっかけでした。本校・中央農業高校で、コンバイン乗車体験やウシの人工授精などを行ったところ、参加者の方々から「高校でこんなに先進的なことを実践しているなんて!」との感想をいただき、自分たちが当たり前だと思っていることが当たり前でない世界の現状があることを知りました。
南砺市の農業法人で働くインドネシアのリドさんも日本の農業を学ぶために富山に来た研修生です。「日本は先進的な機械だけではなく、環境に配慮した農業でも世界の先端を行く。人の健康を害さない農業がしたいんだ」と話されました。世界には先進国で禁止されている農薬をいまだに使用している国があり、環境汚染だけでなく、人の健康被害も多く出ているというのです。安定して食糧を得ることを優先して、安い禁止農薬に頼らざるをえない国がある現実に私は愕然としました。
そんなとき、ヴェトナムでボランティア経験のある齋藤さんとの出会いがありました。齋藤さんは、有害な禁止農薬を使わなくて済むように、低コストな簡易除草機を開発されたそうです。本校では現在、水田にドジョウを放流し、除草効果を得る研究を行っています。ドジョウも出荷することにより、農家の収入増につなげる研究です。そのことを齋藤さんに話すと、「ヴェトナムでも同様の実践ができるかもしれない。ぜひ一緒に取り組みましょう」と力強い言葉をいただきました。私達の研究が世界の農業に役立つ日はすぐそこまで来ています。
さて、日本は幸運にも戦後70年もの間、経済的に急成長を遂げ、平和に暮らすことができています。その平和の礎には、国連をはじめ、世界各国の援助があったことを忘れてはなりません。日本が失敗と経験から得たことを世界に発信していく番です。2012年に開かれた「国連持続可能な開発会議リオ+20」において、日本は国家プロジェクト「環境未来都市」に取り組み、その成果を発展途上国の開発に役立てていくことを約束しました。私の住む富山市も「環境未来都市」として指定されています。ある日、「環境未来都市」の一環としてエゴマ栽培に取り組んでいる石橋社長が来校され、「ネパールでのエゴマ栽培に協力してくれないか」と依頼を受けました。ネパールでは苗を育てる工場をたてる余裕や十分な農業機械もないため、今のやり方では大量生産が見込めないというのです。そこで、石橋さんと共同プロジェクトを立ち上げ、現地でも簡単に種をまくことができる簡易種まき機を開発しているところです。しかし、今年4月のネパール大地震のため、計画が頓挫してしまいました。さらに、先月ネパールへ行ったボランティアの方によると、地震の影響はいまだに大きく、来年エゴマ栽培を始められるかどうか難しい現状だと言います。でも厳しい状況だからこそ、必ず実現したいと決意を新たにしています。
国連創設70周年の今年、ミレニアム開発目標:MDGsに代わる新たな開発アジェンダSDGsが先月末、国連総会で採択されました。世界中がMDGsに取り組んだこの15年間で、極度の貧困状態で暮らす人の数が10億人に半減するなど一定の成果を得ました。しかし、ユニセフヴェトナム事務所のジェリルさんによると、地域間の格差が大きくなるという新たな問題に直面しているそうです。これからの国連の使命は、地域格差のない公平性のある開発をすすめること。グローバルな目標を、私達のように地域で活動する様々な団体・個人と共有し、共に取り組んでいくことが必要なのではないでしょうか。戦勝国、敗戦国といった枠組みから脱却し、新たな未来志向の関係を市民レベルで築いていく。そのために私はこれからも、ヴェトナム・ネパールでのプロジェクトに継続して取り組み、海外からの研修生を受け入れる農業スクールを開設したいと考えています。Action, not words! 「言葉ではなく、行動を!」 次なる70年を生き、新たな未来を切り拓くのは他でもない私達です。
創設70周年を迎えた国連の使命と国連における日本の役割
法務大臣賞
長崎北陽台高等学校 2年 牟田 麗
「あの子たちと遊んじゃだめよ」、4年前、ホームステイ先のアイルランドで言われた言葉…。私は、今まで感じたことがないようなショックを受けました。そこには、ほとんどの時間を路上で過ごす子供たちの姿がありました。「鬼ごっこをしようよ」と言われ、私は友達と一緒に彼らと遊びました。楽しく普段と変わりなく走り回っていました。しかし、突然ある男の子が私の友達に空き缶を投げつけました。怪我もなく大きな騒ぎになることもないのに、ホストファミリーに彼らから離れるようにと言われ、私たちはそこをあとにしました。そしてあの言葉…。なぜ空き缶を投げたのかも、なぜ路上で生活しているのかの理由もきけませんでした。後で、彼らはストリートチルドレンと呼ばれ、病気をもっているかも知れないし、何をするかわからないから一緒にいてほしくなかった、と聞かされました。
現在、世界の貧困率は20.6%で、日本の人口の約12倍ものこどもや大人が、必死に今日を生きています。内線をしている地域、社会資本が整っておらず安心して暮らせない地域、私にはわからない貧困のなかで必死に生きる人たちがいるのです。貧困に晒されながら生きる彼らにも、何不自由なく生きている私にも変わらないものがあります。それは命の尊さです。私たちの命は先祖が繋いでくれたおかげで今ここにあるのです。決して生きている価値がない人など一人もいないのです。しかし、現実はどうでしょうか?見知らぬ人を殺したり、自ら命を絶つ人、行きたくても生きることができない環境にいる人もこの地球上にたくさんいます。この現実をほおっておくことはできません。
今年6月、明治日本の産業革命遺産が世界文化遺産に登録され、長崎市内8つの施設も登録されました。私の祖母は世界遺産に登録された高島炭鉱の島に住んでいます。高島町にある軍艦島には、毎日たくさんの人々が訪れています。この世界遺産を保護する活動もユネスコの活動です。国連の役割は多岐にわたっています。国際平和の維持や軍縮、環境問題や南北問題の解決、人権や難民救済など多くの活動があります。この中で私が注目している活動は、ユネスコの寺子屋運動です。これは教育を受ける機会がなかった人たちにその場を提供する運動です。さらに技術訓練もおこないます。技術を身につけることで、安定した職業につくことも可能です。教育こそが貧困のサイクルを断ち切るカギだといえます。教育こそが未来へのパスポートなのです。ノーベル平和賞を受賞したマララさんは、レバノンに学校を建設しました。シリアから逃れてきた難民の女性が通う学校です。1本のペンと1冊のノート、そして1人の先生が世界を変えると彼女は言っています。日本は寺子屋運動を資金面や、人材の派遣で支えていかなければいけません。アジアのみならず、他の途上国へも広げていく必要があります。
アイルランドで受けた衝撃は、脳裏に焼きついています。自分の目で見て感じたからこそ、彼らのような存在に対する私の意識が大きく変わりました。海外へ目を向け足を運び、世界の現実を見ましょう。グローバル社会といわれながらも、恵まれない状況の子供たちにあまり関心がはらわれていません。くるしみながら生活を送る子供がいなくなるよう、国連の中で日本はリーダーシップをとるべきです。マザーテレサはこう言っていました。"The opposite of love is not hate, but indifference." 愛の反対は憎しみではありません。無関心です。
世界の平和と安定のために日本が国連で果たすべき役割
文部科学大臣賞
関西創価高等学校 1年 小西 沙織
広大な宇宙に誕生した小さな星、私たちの地球。この奇跡の星に未だ残る、国と国との争いや人種差別はどのように乗り越えていけばいいのでしょうか。
私の母は独身の頃、語学や、伝統料理を教えるインターナショナルスクールを開いていました。そこに講師の面接に来た黒人の女性。そこで彼女が語ったのは日本での耐え難き外国人差別の現状でした。「日本に来てから今まで、黒人だからという理由で会ってさえもらえなかった。」と、涙ながらに語る彼女。私はただ肌の色が違うということだけで屈辱を与える人達に、同じ日本人として、否、人として深い怒りと悲しみを感じました。しかし、私も知らず知らずのうちに同じような事をしていたのです。
ある日の学校帰り、駅の改札で戸惑う黒人の男性がいました。助けようかと思ったものの肌の色の違いが私をためらわせたのです。しかし勇気を出して声をかけました。May I help you? すると彼は、Thank you. ありがとう、と何度もお礼を言ってくれたのです。その笑顔に、なんて自分は愚かだったんだと心の底から思いました。私の心の中にも無意識の偏見が存在していたのです。
人種差別を乗り越えるには、差別として捉えるのではなく“差異”として認める事が大切です。違いは個性であり、それを認める一人ひとりになる事が、平和への第一歩に繋がると私は確信しています。
多くの差別は無知から始まります。反アパルトヘイト運動で権力と闘ったネルソン・マンデラ氏は言いました。“教育とは、世界を変えるために用いることができる、最も強力な武器である。”と。
これからの世界は銃でもなく核でもなく“教育”で変えていくべきです。しかし、EFAグローバルモニタリングレポートによると、世界で学校に通えない子供たちは5800万人、農村の女の子や少数民族の子供達には未だ教育は届いていません。一方、日本ユネスコ協会の寺子屋運動で41歳にして識字者となったネパールの女性は、教育を受けたことで女性の権利運動に参加するようになり、平和への行動を起こし始めたのです。
二十世紀が分断の時代であったならば、二十一世紀は共生の時代。私たちは文化的、民族的、宗教的な違いに翻弄されることなく、国を超えて連帯していかなければなりません。そして、それが出来るのは193ヶ国にニュートラルな立場である国連以外にありません。その国連で昨年、これからの十年を決する、持続可能な開発に関するグローバルアクションプログラムが採択されました。その中でも私は優先事項の一つである「ユース」への支援を強く呼びかけたいです。世界平和実現に向けて、最も影響力のある私たち青年が、その実現への主体者となることが今、重要だと思います。さらに、ユースの取り組みであるeラーニングは、パソコンやタブレットで学習を展開するシステム。これには技術大国である日本が大いに貢献できると思います。
そして私は、この活動に加えて、これからの時代を担う各国の青年達が意見を交わし、対話・友好を深める取り組みを国を挙げて開始すべきだと考えます。例えば、日本の高校と提携する海外の姉妹校を増やし、タブレットなどを用いて対話を重ねるというものです。時差を考慮し、提携はまずは日本の周辺国。特に、中国、韓国との交流は積極的に取り入れるべきです。交流を通じて生まれた友情や心の絆は、憎悪や偏見に基づく集団心理に流されることなく、永遠に存在し続けると思うからです。そして私たちの世代が世界を担うとき、この青春時代の対話こそが各国の相互理解に大いなる貢献を生むはずです。
最後に、これらの主張すべての根底にあるのは「他人の不幸の上に自分の幸福を築くことはしない」という信念です。他国の犠牲の上に自国の利益を求めることはせず、国連という平和の大城のもと、世界市民の連帯を今こそ開始する時です。私の高校にも海外のお客様や留学生が数多く来られ、私もエスコートをしたり懇談会に参加し、積極的に世界へ友好の輪を広げています。
これからの共生の未来は、私たち青年が切り開くとここに固く誓い、世界平和実現に貢献できる人材へと大成長して参ります。
世界の平和と安定のために日本が国連で果たすべき役割
― 核兵器のない未来 ―
公益財団法人日本国際連合協会会長賞
広島女学院高等学校 1年 植田 愛佳
世界には現在、何基の核兵器が存在するのでしょうか。その数は約1万5千基です。今の核兵器は広島、長崎に投下されたものよりも圧倒的に威力が強いのは言うまでもありません。私は小学校から平和教育を受け、原爆による被害についても学んできました。原爆で大切な人や生活基盤を突然にして奪われた人の悲惨さは、本当に恐ろしいものです。そのため、核兵器廃絶を望むようになったのは、とても自然なことでした。
まず、核兵器廃絶すべき理由を、大きく二つに分けて説明します。
一つ目はテロリストが核兵器を使用する恐れがあることです。そうなれば、また、あの悲劇が再現されてしまいます。どんな強大な核兵器を保有していてもテロリストには抑止力が通用しません。いつ核戦争が起こるかわからないという恐怖がつきまといます。
二つ目は、費用の問題です。アメリカは財政難対策として核兵器の維持費を削減することを言明しています。これからも分かるように、核兵器の維持には莫大な費用がかかっています。もし、核兵器をきちんと維持できない財政難になってしまったらどうでしょうか。核兵器のリスクは戦争での使用だけではありません。
私が考える日本が国連で果たすべき役割は、核兵器廃絶に向け積極的に行動できる人材の育成のために、平和教育を推進することです。安倍総理が戦後70年談話で「核兵器の不拡散と究極の廃絶をめざす」ことを表明されています。私もその通りだと思います。唯一の被爆国である日本は、世界に核兵器廃絶を訴え続けていくべきです。
私が具体的に考えた案は、国連に、核兵器廃絶に向けた教育の環境づくりに取り組む新しい専門機関 “The United Nations Education Institution for Nuclear weapons Abolition” UNEINA 通称:ユネーナを設立することです。専門機関をつくることで、核兵器廃絶の活動の規模を広げることが出来ます。私の学校では核兵器廃絶の署名活動を行っています。今までに約35万人の方から署名を集めており、それらは国連内に展示されています。「核兵器はいけない物である」 「廃絶すべき」 と感じ、署名してくださる方は沢山居られます。核兵器廃絶を願う人が増え、それが世論となれば、国家は動かざるを得なくなります。
それでも、各国が核兵器廃絶に向け動かない理由のひとつは、「核兵器の不必要生を漠然と理解しているだけで、絶対に廃絶すべきという行動に結びつく国際世論になっていない」からだと思います。日本ですら、広島への原爆投下日時を答えることの出来た小学生は、三割にも及びません。核兵器の本当の恐ろしさを理解していくような学びが必要です。そのためにはやはり、原爆による被害を把握すべきだと思います。先人が歩んできた歴史を子供のうちから知ることで今を考えるヒントとなります。
私は今までに、多くの被爆証言を聞いてきました。実体験に基づいた証言は説得力があり、記憶に残りやすく未来を考える推進力になります。また実際に、広島や長崎を訪れることが出来ない方には、SNSを用いて知ってもらいます。
例えば、広島アーカイブです。これは、被爆者の方の証言を実際に誰でも聞くことが出来るというサイトです。グーグルアース上の被爆されたところに、撮影した証言ビデオとそれを日本語と英語で文書化したものが掲載されています。被爆者の平均年齢80歳を越えた今でも、映像や文字によって後世に残すことが出来ます。
私が提案する、新しい専門機関ユネーナではこれらを受け継ぎ、伝えられる方を支援、育成し、各地での講演会を通じて、核兵器廃絶にむけ行動が出来る人の輪を広めていきます。日本は被爆国として、平和教育が出来る人材を輩出していくべきです。核兵器廃絶と世界平和実現に向け、未来に向かって行動ができる人材の育成とネットワーク作りこそ、日本が国連の中で果たすべき役割だと思います。