第65回 国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール
- 第65回(2018年度) 入賞者発表 -
外務大臣賞
富山県立中央農業高等学校 谷口 珠綺 さん
日本国内における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、今、私達ができること。
法務大臣賞
宮城県仙台二華高等学校 盧 優慈 さん
人権を擁護・促進するために、私達は国連と共に何をすべきか。 - 自分らしさ-
文部科学大臣賞
宮崎県立宮崎大宮高等学校 橋本 七帆 さん
人権を擁護・促進するために、私達は国連と共に何をすべきか。 - モンゴルでの経験を通して私にできること -
公益財団法人日本国際連合協会会長賞
福岡インターナショナルスクール 古賀 まい さん
日本国内における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、今、私達ができること。
全国人権擁護委員連合会会長賞
広尾学園高等学校 小田川 綾花 さん
人権を擁護・促進するために、私達は国連と共に何をすべきか。 - 文化と人権の共生 -
公益社団法人日本ユネスコ協会連盟会長賞
長崎県立長崎北陽台高等学校 山口 愛 さん
国連の重要性を,私達はどのように理解すべきか。
日本ユネスコ国内委員会会長賞
アサンプション国際高等学校 森本 陽南子 さん
人権を擁護・促進するために、私達は国連と共に何をすべきか。 - 子供の人権について考える -
公益財団法人安達峰一郎記念財団理事長賞
徳島市立高等学校 澤田 晴奈 さん
国連の重要性を,私達はどのように理解すべきか。 -「見える化」で「変える可」へ国連の役割 -
NHK会長賞
静岡サレジオ高等学校 高田 愛弓 さん
国連の重要性を,私達はどのように理解すべきか。
国際連合広報センター賞
青森明の星中学・高等学校 高橋 美月 さん
日本国内における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、今、私達ができること。
- 特賞入賞作品紹介 -
日本国内における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、今、私達ができること。
外務大臣賞
八富山県立中央農業高等学校 2年 谷口 珠綺
私は現在、SDGsゴール15(陸の豊かさも守ろう)の達成に向けて、地域で「耕作放棄地の対策」に取り組んでいます。その理由は、国連生物多様性の10年の期限まであと2年にも関わらず、耕作放棄地は日本全体で約40万haが放置されているからです。
耕作放棄地は、草が生い茂っているので、サルやイノシシのえさ場になっていることから人里に降りてくる原因になり、人的被害や環境破壊が起きています。その対策として、耕作放棄地の草を食べてもらうためにヤギを放牧することを考えました。そこで、地域でヤギを飼育している森坂さんに相談し、ヤギを放牧することができました。その結果 3.3haの耕作放棄地に放牧することができ、サルが人里に降りてくる回数を平成27年度と比較して47%減少、イノシシにおいては、40%減少させることができたのです。
そんな時、インドネシアから研修に来られたクミルさんから環境問題の意見を伺うことができました。インドネシアでは耕作放棄地が拡大し、放置されていること。野生動物が人里に降りてくると駆除されてしまうことを教えていただきました。日本においてもインドネシアと同様にサルやクマ、イノシシなどの野生動物は、人里に降りてくると駆除され、野生動物と共存できない状態です。このことから、私が取り組んでいる「耕作放棄地の対策」は、インドネシアの環境問題に貢献できるのではないかと考えました。そこで、元国連事務次長、赤阪清隆先生にスライドを交えたプレゼンテーションを行い意見を伺いました。すると、赤阪先生からは「環境にやさしい取り組みである。この持続可能は環境保全活動を生かして、インドネシアのために貢献してほしい。」と激励していただいたのです。早速、インドネシア教育振興会の代表 窪木さんに面談を申し入れ、私の取り組みについて説明し、インドネシアの環境保全に貢献したいことを伝えました。その結果、日本インドネシア国交樹立60周年記念事業認定「中学教科「環境」の確立と環境教育の普及支援プロジェクト」に参加できることになったのです。イスラム大学教授 ヤンティ先生 他20名の方々を対象に、地域で「ヤギを活用した耕作放棄地の対策について」の研修会を開催しました。すると、ヤンティ先生から「ヤギを除草目的で使うなんて、インドネシアでは考えられない!」と驚かれ、「日本の高校生が取り組む持続可能な環境保全活動」として、ぜひ教科書で紹介したいと申し出てくださりました。後日、「現地で環境教育の指導を行ってほしい」と要請を受け、現在、ヤギを活用した環境教育プログラムを開発中です。世界の環境教育に役立つ日は、すぐそこまできています。
SDGs の達成のために、今、私たちができること。それは、自分ができる活動からはじめ、その輪を広めていくことです。私が活動を行っている富山市は、政府から「SDGs未来都市」に選定されています。そこで、そのモデルとなるように、様々なイベント会場や研究発表会で、「ヤギを活用した耕作放棄地の対策について」発表しました。積極的な意見交換を行うことで、私と共に地域で活動してくださる方々も現れ、情報を発信していくことの大切さを実感しました。
SDGs は17の目標があり、それは相互関係にあります。一つの目標に取り組みことによって、その他の目標の達成につながります。だからこそ、私たち一人ひとりの力が必要なのです。これからの国連の役割として、地域で活動する小さな私たちの活動を認証・支援し、その取り組みを世界に発信していくことが大切です。そして、その情報を国連総会で発表し、意見交換の場を設けるのはいかがでしょうか?なぜなら、私たち一人ひとりができる範囲は限られていても、国連のネットワークを生かすことで、世界中で協議し、取り組むことができると考えるからです。そのために私はこれからも、市民レベルから地球レベルへと活動の輪を拡げ、SDGsの達成に向けて、全力で取り組みます。誰一人取り残さない世界の実現をめざして。
人権を擁護・促進するために、私達は国連と共に何をすべきか -私の”自分らしさ”-
法務大臣賞
宮城県仙台二華高等学校 2年 盧 優慈
私は韓国で生まれ、日本で育ちました。数年前、韓国に里帰りした時のことです。私たち家族はかつての王の城である昌徳宮を訪れました。そこには、韓国の王妃を日本の武士が殺害した場所があります。そこに若い女性二人組が来て、同じくその看板を読み、私たちの日本語を聞いて急に口をつぐみ、少し避けた様子でその場を去っていきました。あの人たちは私たちを日本人だと思って、気を遣ってその場を去ったのだろうと母はいいました。
この時 私はとてもショックを受けました。私の家の文化は食生活も年中行事も韓国のものによっており、私は日本に住んでいても、心の奥底では韓国人のつもりでした。しかし、日本語しか話せない私は傍らから見れば、日本人です。韓国での出来事を機に私はとても悩みました。自分が一体何者なのかと。日本人としても韓国人としても中途半端な存在のような気がしてなりませんでした。そんな自分のアイデンティティとは一体何なのか。私は考え続けました。
成長するにつれ、私は両親と多く話すようになりました。その中で両親の考えに触れ、生き様を知りました。「その人が今のその人になったのには理由がある。その人の生きてきた歴史を知って、本当にその人のことを知ったことになるのだ。」と教えられました。
自分はいったい何者なのかという終わらない問いと向き合い、私が導いた結論は「どんな人であろうと、みんな同じ人間なんだ」ということです。たとえその人の人種、宗教、性別、趣味趣向が何であれ、人は苦しみ、悩み、喜び合い生きています。どんな人であっても同じ一人の人間なのです。
私は今までの人生で、自分の名前でからかわれたことも、いじめられたこともありません。とても幸運であったと自覚しています。しかし、私は韓国人を嫌う日本人、日本人を嫌う韓国人どちらにも会ったことがあります。どちらの気持ちも私は理解できます。国ごとに国民性があるのは、文化や生活習慣が違うのですから、当たり前です。「国」という枠組みではなく、その人「個人」を理解する努力が大切だと私は思います。私のように複数の国の文化の影響を受ける人も多くいるのですから。
私の両親はオリンピックのような国際的な大会では韓国を応援します。私は日本を応援します。それでいいと思うのです。相手に自分の意見を強要するのではなく、互いの意見に違いがあることを認め、ありのままでいる。「あなたと同じ考えにはなれないけれど、あなたを理解できるよ」そう言いあえる世界になれば、対立は少しは減っていくと思います。
国連は世界中のすべての人が持つ全ての人権を擁護・促進するために人権教育に大きく力を入れてきました。そして今年、2018年は世界人権宣言が採択されてから70周年目を迎えます。この節目に、あらためて、世界の現状を見つめると、自分のアイデンティティを押し込められ、差別され、豊かな人生を送ることのできない人がたくさんいます。
「人権」、それはいったいなんでしょうか。「自分が自分らしく」いられることだと、私は思います。私のアイデンティティや経験を多くの人に伝えること、これも私が国連とともにできることの一つです。この弁論大会に出場したことは、そのアクションの第一歩としてとらえています。
世界中に多く差別が存在しているのは一人一人の「違い」を人々が受け入れられないからです。違いを「認める」という作業こそ今の私たちが差別をなくすためにまずできることです。多文化化が急速に進むこのグローバル社会。互いに違うことを認め合って、生きていきませんか。そういう世界を共に作っていきませんか。
人権を擁護・促進するために、私達は国連と共に何をすべきか -モンゴルでの経験を通して私にできること-
文部科学大臣賞
宮崎県立宮崎大宮高等学校 2年 橋本 七帆
昨年の夏、私は JICA の海外研修でモンゴルを訪れました。首都ウランバートルに立ち並ぶ高層ビル、宿泊したゲル周辺の雄大な自然や美しい星空。モンゴルは、私がイメージしていた国よりもずっと発展していました。
モンゴルの初等教育純就学率は99.3%を誇り、世界平均の67%と比較しても非常に高い水準を保っています。教育環境も充実し、発展を続けるモンゴル国に私はただ感心するばかりでしたが、現地職員の方の「皆さんはここに来て障がい者を見ましたか?」という質問で、街中で一度も障がい者を見ていないことに気づきました。
街を歩くと至る所に段差や障害物があり、これでは障がいのある人々が安心して外に出ることは出来ないと感じました。障がいに対する理解が不十分であるため、学校に通えず家庭内で育てられたり、就学を断られたりすることも多いそうです。これらの問題から、障がい児の就学率は15.7%にとどまっています。高い就学率を誇る一方で、モンゴルでは、障がいのある子どものほとんどが学校に通えていないという状況に、私は衝撃を受けました。
モンゴル政府は障がい児のニーズに合う教育サービスの開発を目標のひとつに掲げていますが、高い就学率を誇るモンゴルで多くの障がいのある子どもたちが教育を受けられていないということは、世界には同じような子どもたちがさらに多くいるということです。例えば、南スーダンの就学率は27%。この中に教育を受けられている障がいのある子どもは何人いるでしょうか。モンゴルと同様に差別や偏見が原因で子ども達が教育を受けられない状況が他国にもあるはずです。そこで国連の力が必要です。国連人権高等弁務官事務所では、人権教育の分野における技術訓練や支援などが行われていますが、これに加え、意識啓発活動を行うべきです。193もの国が加盟している国連ならば、世界中での啓発活動が可能になります。意識の啓発が進めば、バリアフリーなどの社会環境を整えていくことにも繋がり、障がいのある子どもたちでも安心して学校に通えるようになります。
モンゴルには「千回聞くより一回見る」ということわざがあります。これまで何度も開発途上国の話を聞いたことはありましたが、自分の目で現状を見たことで、海外により高い関心をもつことは出来ました。国連は、学生ボランティア活動の海外派遣を活発にし、多くの学生に広い視野を手に入れる機会を提供すべきではないでしょうか。そうすれば SDGs の「すべての人に平等で質の高い教育を確保する」重要性を理解することができます。
そして私たちにできることは情報発信です。国連では「人権のために立ち上がろう。あなたの声を加えよう!」というキャンペーンが行われています。私は SNS を通してモンゴルについての情報発信を行いました。Twitter で自分が撮った街中の風景と共に、モンゴルに行って感じたことを投稿すると、多くの人が興味を示してくれて、この投稿の閲覧数は 1万5000回を超えました。また Facebook では、「 So many places need help as they are thought of as less than humans. It’s sad. 」~あまりにも多くの場所で助けが必要とされている障がいのある人々が、人間ではないかのように考えられていることが悲しい~ というコメントをもらいました。私たちの身近にある SNSを利用すれば世界中の人に情報発信ができることを実感しました。SNS が発達した現代なら、国連で国と国が繋がっているように、私たちも世界中の人々と繋がり、人権を守る活動ができます。国連が地球規模で活動をし、私たちは身近なところから行動していくのです。私はこれからも情報発信を続けていきたいと思います。
今年は世界人権宣言70周年を迎えます。国連副事務総長 アミーナ・J・モハメッド氏は「時として、歴史においてはすべてが突然整い、その機会が訪れるときがあるものです。」と述べています。この節目の年に、国連と私たちが連携し、すべての子どもたちの人権が守られる社会が実現できるようアクションを起こす時ではないでしょうか。いつか、すべてが整った社会が訪れる時を目指して。
日本国内における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、今、私達ができること
公益財団法人日本国際連合協会会長賞
福岡インターナショナルスクール 1年 古賀 まい
「身から出た錆」、自分の犯した悪行のために、自分自身が苦しむことを表すことわざが日本には存在します。今、この世界を生きる私達に最も見合った戒めの言葉であると私は思います。私は SDGs、持続可能な開発目標の数の多さに非常に驚かされました。より良い地球環境を皆が協力して創っていくために私達が今すぐにでもやらなければいけないことが沢山あると思います。その1つの例として挙げられるのがプラスチック製品の根絶への試みです。地球環境が破壊へと進む要因は様々なものがありますが、私達が生活の中で容易く参入できるのは、プラスチック製品への配慮です。
私達は産業革命以前、ストローの代わりに藁を使い、食品の保存にはラップではなく植物の葉を使うなど自然界にあり、土に還るものを使用してきました。ですが、プラスチックを分解する微生物が自然界には存在せず、腐ることも錆びることもありません。その影響で自然界に戻っていくサイクル、食物連鎖がストップされるため、ただ蓄積されていきます。これが1つ目の社会問題である海洋汚染に繋がっているのです。
さらにプラスチックは炭素と水素からなる有機物で、燃えるものの二酸化炭素と水に変わってしまいます。そのため、結局は地球温暖化の手助けをもしてしまっているのです。殺人的猛暑と言われた夏の暑さに加え、北海道では初雪が8月に降るという記録的寒波も押し寄せた今年の夏。さらには8月だけで日本近海に9つの台風が発生し、洪水や氾濫に見舞われ、今もなお仮設住宅に移住する被災者の方々も大勢います。
自然災害は誰にも止められないという声を私はよく耳にします。ですが、この事態を招く原因を作っているのは紛れもない私達なのです。これこそ身から出た錆なのではないでしょうか。私は実際に学校で行われるボランティア活動で海の掃除を行う機会があり、その度に感じたのは土に還らないゴミの多さです。
プラスチックの軽い、腐らない、錆びないなどという望みの性質を与えるために様々な化学物質が加えられています。それらの添加物が人体に有害であるということを証明する研究が進められている現状です。1人が「一本くらいいいだろう」とペットボトルを放り捨てたとします。風雨などによって細かく砕かれ海に流れ出た成分を海洋生物が摂取し、体内に蓄積されます。それらの海洋生物がいずれは私達の食卓に上がってくるのです。つまり魚や動物がプラスチックを食べ、私達もそれを食べているのです。
実際にアメリカでは1日5億本のストローが廃棄されています。その現状を受けたアメリカのスターバックスは、プラスチックストローを廃止することを決定しました。温暖化ごみ問題、海洋汚染、それら全ての原因を作ったのが私達であるのならこの悪循環を止められるのもまた、私達の他ありません。
気候変動に具体的な対策を講じる為に、海の豊かさを守る為に、陸の豊かさを守るために、日本の四季のみならず、世界をより生きやすい環境にする為に、千里の道も一歩から着実に進んでいくべきなのではないでしょうか。これば世界を変える大きな第一歩に繋がると私は思います。