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第69回 国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール

- 第69回(2022年度) 入賞者発表 -

外務大臣賞

鶴丸高等学校 坂元 愛実 さん

人権には幅広い定義があり、様々な権利がある。国際社会が直面する課題が多様化する中で、国連が特に取り組んでいくべき人権の分野は何か?

法務大臣賞

九州文化学園高等学校 井手 美優 さん

今の国際情勢の中で、国連は何ができるのか(国連に何が求められているのか)。 - 同じテーブルに -

文部科学大臣賞

愛媛県立松山東高等学校 兼頭 玄 さん

持続可能な開発目標(SDGs)の中で一つ目標を選ぶとしたら、どのような理由でどの目標を選ぶか。また、その目標をどのように達成するか。

公益財団法人日本国際連合協会会長賞

早稲田大学本庄高等学校 佐々木 結 さん

人権には幅広い定義があり、様々な権利がある。国際社会が直面する課題が多様化する中で、国連が特に取り組んでいくべき人権の分野は何か? - イスラム教徒が抱える生きづらさ -

全国人権擁護委員連合会会長賞

宮崎県立高鍋高等学校 守部 心々音 さん

今の国際情勢の中で、国連は何ができるのか(国連に何が求められているのか)。 - 国境をなくす魔法 -

公益社団法人日本ユネスコ協会連盟会長賞

アサンプション国際高等学校 佐々木 亜子 さん

持続可能な開発目標(SDGs)の中で一つ目標を選ぶとしたら、どのような理由でどの目標を選ぶか。また、その目標をどのように達成するか。 - 11年目のランドセル -

日本ユネスコ国内委員会会長賞

京華高等学校 川崎 海青 さん

人権には幅広い定義があり、様々な権利がある。国際社会が直面する課題が多様化する中で、国連が特に取り組んでいくべき人権の分野は何か?

公益財団法人安達峰一郎記念財団理事長賞

三重県立津西高等学校 松井 美樹 さん

持続可能な開発目標(SDGs)の中で一つ目標を選ぶとしたら、どのような理由でどの目標を選ぶか。また、その目標をどのように達成するか。 - 私の回りのフェアトレードの取り組み -

NHK会長賞

日本航空高等学校 麓 彩羽子 さん

人権には幅広い定義があり、様々な権利がある。国際社会が直面する課題が多様化する中で、国連が特に取り組んでいくべき人権の分野は何か? - LGBTQと私 -

国際連合広報センター賞

富士見丘高等学校 深瀬 青桜 さん

今の国際情勢の中で、国連は何ができるのか(国連に何が求められているのか)。 - 教育への投資は、未来への投資 -

- 特賞入賞作品紹介 -

人権には幅広い定義があり、様々な権利がある。国際社会が直面する課題が多様化する中で、国連が特に取り組んでいくべき人権の分野は何か?

外務大臣賞
鹿児島県 鶴丸高等学校 2年 坂元 愛実

フィリピンに住むある少年から衝撃的事実を聞いたのは四月、私がSDGsについて学ぶ講義に参加したときでした。彼の生活状況は過酷でした。スモーキーマウンテンと呼ばれる大量のゴミの山のうらに暮らしているというのです。雨の日の悪臭で腹痛に苦しみ、学校に行けばクラスメイトにからかわれます。生ゴミと日光が化学反応を起こし、煙が上がります。巨大なゴミ山はなぜできたのでしょうか。一つは行政が管理する集積場が少ないことが挙げられます。しかし、もう一つには深刻な問題がありました。

リゾートビーチ、きれいな海があることで知られるセブ島。観光客で賑わう砂浜から車で三十分のところにはゴミ山が存在します。異国からのゴミに頭を抱えていますが、観光客のおかげでセブ島の財政は支えられているため、この事実を公にできずにいます。白い砂浜で休暇を楽しむ富裕層の裏でゴミ山に住むことを余儀なくされた人々がいます。

フィリピンだけではありません。セネガルでは、美しい砂浜が見えないほどの海洋ゴミが押し寄せています。ケニアにはかつてのきれいな場所を取り戻すためのボランティアが存在します。

先進国からたまたま流れ着いたゴミだけがこの状況を招いたのではありません。ゴミの輸出。聞き慣れないその言葉に何度も耳を疑いました。

日本はプラスチックゴミを東南アジア、中国に輸出していました。輸出量は減っているとはいえ、八十二トンものゴミを各国に輸送しています。そのほか先進国は自国で処理できない有機廃棄物を発展途上国に押し付けていたのです。バーゼル条約で東南アジアへの輸出規制がかかり、二○一八年に中国が規制を強化してから、次の標的はアフリカとなり、その輸出量は二○一八年の四倍に膨れ上がりました。セネガルやケニアを始めとする国々に一年間で十億トンものゴミが輸出されているのです。

中には不法な輸送も見つかっています。先進国が発展途上国の人々の権利や自由を奪っているのです。平等とはほど遠い現実に私は暗い将来を描いてしまいます。国連の世界人権宣言に述べられる「権利と自由に対する破壊的活動の禁止」こそ国連が今真っ先に取り組むべき課題であり、南北問題から派生した不平等に焦点を当てるべきだと私は思います。自分の国の発展さえ保てれば良い。そんな考えで海に捨てたゴミは地球の裏で罪なき人々の幸せを奪っています。観光地を保つためにゴミは住宅街に隠されます。リサイクル技術や集積場の少ない発展途上国の厳しさは報道されず、無意識な破壊行為は続いています。衛生環境は悪化し、健康とは程遠い生活に、子供の夢までも押しつぶされます。

グローバル化がもたらしたのは、美しいものであったのでしょうか。国際協力としてもたらされたのは技術提供、補助金だけであったのでしょうか。廃棄物などの国境を越えた負の贈り物は許されるべきではありません。同じ青い空の下、皆がそれぞれの尊厳を保ち、自由に目標を掲げ、期待を膨らまし、地球に生まれたすべての命が平等であること。これが豊かな社会への一歩であり、これから地球に訪れる困難に人類が一つになって戦うための条件だと思います。

権利と自由に対する破壊的活動を全て禁止し、権利と自由の平等を実現した社会の強さを知りたいと思います。

今の国際情勢の中で、国連は何ができるのか(国連に何が求められているのか)。 - 同じテーブルに -

法務大臣賞
長崎県 九州文化学園高等学校 3年 井手 美優

夕食が終わり部屋で過ごしていると、スマホが鳴りました。いつものように友人からのSNSの連絡です。しかしいつもと違い、画面には「もう限界。A子を何とかして!」の文字が並んでいます。学校で私たちは、気の合う仲間で過ごしていましたが、その中の一人、A子の言動が問題になっていました。「今日のあの態度、最悪。」「私、ムリ!」・・・すぐに画面の中は、A子への非難の言葉であふれました。A子には自己中心的な性格があり、他人を自分の意見に従わせようとするところがあります。それに耐えられなくなった友人たちは、A子をSNSグループから外そうと言い出しました。そこまでしなくてもと私は思いましたが、賛成多数の雰囲気の中、A子はグループから外されてしまいました。

このようなことがあった頃、私たちのトラブルとは比べ物にならない大きな事が起きました。今年2月、ロシアとウクライナの間で戦争が始まったのです。私は、被爆県長崎の高校生として、部活動で平和について学んでいます。これまで、原爆についての調査や行事を行ってきました。この戦争についても、部員や先生と問題点や解決法について話し合っています。その中で、国連の話題が頻繁に出ます。しかし、「戦争を起こさないための国連なのに、常任理事国自身が戦争を起こすなんて。」「ロシアを常任理事国から外すべき。」と言った声が聞かれます。これまでも、内線が深刻化するシリアや核開発を続ける北朝鮮に対して制裁決議が出されても、常任理事国の一部が否決したこともあり、国連は機能していないように思えてなりませんでした。

このことに対して何か答えを見つけたいと思った私は、部活動の卒業生で、外務省に勤務されている先輩に、国連の存在意義について尋ねてみました。この質問に対して先輩からのメールは、「国連の存在は大変重要だ。」と始まり、次のように続いていました。常任理事国である国が戦争を始めるというのは許されることではない。しかし、許されないからと言ってその国を追放してしまうと、更なる暴走をしてしまうかも知れない。今すぐに戦争を止めさせることはできないけれど、話し合える同じテーブルに着いている限り、暴走を抑えることもできるし、解決への糸口が見つかるかも知れない。国際連盟が加盟国の脱退で形骸化し、第二次世界大戦を防げなかったことからもわかる、とありました。私はこの答えに納得すると同時に、チクリと胸が痛みました。十分な話し合いもせずにA子をSNSのグループから外してしまったことを思い出したからです。

SNSでの失敗を後悔する一方で、私は先輩のメールから、国連について更に重要なことを教えられました。それは、国連の役割は戦争に関することだけではないということです。世界は今やグローバル化、ボーダレス化が進み、良いこともある反面問題も多く、その規模も大きくなっています。したがって多くの国が協力・協調し合って解決に当たらなければなりません。例えば、新型コロナ感染症や地球温暖化などはまさに地球規模の問題です。だからこそ、多くの国が同じテーブルの上で話し合い取り組む必要性、つまり多国間主義を大切にしなければならないのです。

国連に何が求められ、何ができるのか。この問いかけはそのまま自分たちに返ってくると私は考えます。私たちが、平和や真の豊かさを実現しようという思いを持っていれば、それがそれぞれの国の意思としてまとまり、更にその意思が国連の場で協議され、多くの人の望む世界が実現していきます。私たち一人ひとりが同じテーブルに着いているという意識を持つこと、これこそが、国連は何ができるのか、の可能性を限りなく広げることに繋がるのではないでしょうか。

メールを読んだ後、私はアプリをSNSに切り替え、友人たちに向け文字を打ち込みました。「明日、A子とお昼ご飯、一緒に食べない?」

持続可能な開発目標(SDGs)の中で一つ目標を選ぶとしたら、どのような理由でどの目標を選ぶか。また、その目標をどのように達成するか。 - 小さいけれど、大きな一歩 -

文部科学大臣賞
愛媛県 愛媛県立松山東高等学校 1年 兼頭 玄

私のふるさとは瀬戸内海の小さな離島、弓削島です。
 そばにはいつも海がありました。泳いだり、海藻を採ったり、潮だまりの生き物を観察したり。
 海は、遊び場であり、学校でした。
 しかし私を育ててくれた海に、今変化が起きています。

私のふるさとは瀬戸内海の小さな離島、弓削島です。
 そばにはいつも海がありました。泳いだり、海藻を採ったり、潮だまりの生き物を観察したり。
 海は、遊び場であり、学校でした。
 しかし私を育ててくれた海に、今変化が起きています。

私がSDGsの中で達成したい目標は、「海の豊かさを守ろう」です。

私の父は東京に住むサラリーマンでした。
 しかし、自然の豊かさや人とのつながりなど、都会にはない島の魅力に惹かれ、弓削島に移住しました。
 やがて父は、島の人たちを先生として、磯遊びや、郷土料理など、島の自然や文化を体験できるツアーを企画するようになりました。
 ツアーには、様々な国や世代の人たちが参加しました。
 父を手伝う中で、私も私の知っている海の魅力を伝えることが喜びになりました。

もっとも私が知っているのは、海の美しい姿ばかりではありません。風が強く吹いた次の日にゴミだらけになる浜も、海水温が変わって魚や海藻が少なくなった海の姿も私は知っています。それらを見るのは、とても辛いことでした。

中学生の時、世界の海で、マイクロプラスチックが問題になっていることを知りました。そしてその問題を解決するためには、自然界に流出したプラスチックを、小さくなる前に回収することが、地道だけれど着実な方法だと知りました。
 私は、今自分にできる行動は何だろうかと考え、あるイベントを開きました。「ビーチクリーンクリスマス」と名付けたそのイベントに、島の中高生や先生方、住民の方など50人ほどが参加してくれました。私たちは、専門の先生からマイクロプラスチックについてのお話を聞いた後で、砂浜に流れ着いたプラスチックゴミを回収しました。
 マイクロプラスチックだけを集める時間も設けました。砂に混じった5mm以下のかけらを見つけ出すことは、根気のいる作業です。だから、その作業を少しでも楽しんでもらうための工夫をしました。様々な色をしたマイクロプラスチックを、クリスマスの飾りをつけた小さなボトルの中に入れて、持って帰ってもらったのです。
 後日、参加者の一人がこんな感想を聞かせてくれました。
 「部屋に飾ったボトルを見るたびに、海を大切にしなきゃと思うよ。」
 行動を起こしたことで何かが動き出した気がしました。

環境問題の解決には、国境や利害を超えた幅広い協力が必要です。
 それを実現するために自分に足りないものは何か。私は考えました。
 「世界の人たちと協力するもなにも、まず会話ができないとな。いや言葉だけじゃないぞ。文化も価値観も違うんだ。それぞれの立場をちゃんと理解して、一つの目標にまとめていく力を育てなきゃ。」
 それらの力を身に付けるために、都留文科大学で国際教育学を教える佐々木南実先生の協力の下、3歳年上のタイ系アメリカ人アーナンと、週に一度オンラインミーティングを始めました。南実先生とアーナンは、父のツアーの参加者でした。
 私とアーナンは、それぞれの問題意識をテーマに研究や議論をするようになりました。インドから大学教授であるプシュカ先生も加わって、科学的、専門的なコメントももらえました。
 私はそこでもマイクロプラスチックの問題を取り上げ、研究成果や島での活動について、インドの学生たちに、オンラインでプレゼンテーションをする機会を得ました。
 英語での資料作りやスピーチには苦労しましたが、海を隔てた遠い国の、輝く目をした同世代の仲間たちとの議論は、刺激的でした。
 ある学生が、伝えてくれました。「自分も社会を変えるために、自分の村で行動を起こしたい。」
 思いは国境を越えて伝播し、行動は言葉の壁を越えて人を動かす。私はそう確信しました。

私が踏み出した一歩は、小さな一歩だったかもしれません。しかしその一歩は世界につながる一歩です。
 そしてそんな一歩を世界中の仲間たちが踏み出したなら、やがて大きな塊となって世界を動かすでしょう。

私は夢見ています。
 豊かな海や持続可能な世界が、目標でなく当たり前の日常に変わることを。
 ともに、小さな一歩を踏み出しましょう。
 今、みなさんのいるその場所から。

人権には幅広い定義があり、様々な権利がある。国際社会が直面する課題が多様化する中で、国連が特に取り組んでいくべき人権の分野は何か? - イスラム教徒が抱える生きづらさ -

公益財団法人日本国際連合協会会長賞
神奈川県 早稲田大学本庄高等学校 2年 佐々木 結

طالب タリバン、このアラビア語の意味を、どれほどの人が知っているでしょうか。実は、タリバンとは「学生」という意味です。片手に銃を持つ恐ろしいテロ組織タリバンは、もともとイスラム教の学校に通う若者で結成されました。

私は語学が大好きで、今年の夏休みにアラビア語の学習を始めました。その中で先日、「タリバン」という単語に出会ってその意味を知り、ハッとしました。もともとの「タリバン」には何の罪もないのだと知ったからです。「タリバン」とは本来、私と同じ若者、普通の学生達であり、そのごく一部が過激化した結果、テロ集団と化してしまったのです。

テロ組織タリバンは、アフガニスタンで女性の人権を奪うなどの恐怖政治を行っており、国際社会から強く非難されています。ですが、上記のように、すべての「タリバン」が悪い訳ではありません。過激な思想に染まらなかった学生も多くいるのです。この例のように、一部だけを見て全体を決めつけ、罪なき人まで差別してしまう状況が、イスラム教徒全体についても起こっています。

9.11以降、タリバンはテロリストとして恐れられています。たしかにタリバンはイスラム教徒、つまりムスリムですが、ムスリム全体で見れば、その割合は1%未満です。99%以上の人々が、穏やかな日常を望む、罪なきムスリムなのです。しかし、「タリバン=イスラム過激派=イスラム教徒」という誤った連想ゲームにより、多くの善良なイスラム教徒がテロリストの仲間としてのレッテルを貼られ、様々な偏見や差別に痛めつけられています。

カナダでは昨年6月、道を歩いていたイスラム教徒の家族に車が意図的に突っ込み、4人が死亡しました。その8日後にはビジャーブと呼ばれるイスラムのスカーフを巻いた女性が、見知らぬ人に首をつかまれ、地面に投げられました。日本も例外ではなく、在日ムスリムの子どもたちが学校で、「お前はテロリストだ」「爆弾だ」と言われたこともありました。また、欧州司法裁判所はビジャーブの着用について、企業は一定の条件のもとで禁止することができる、との判断を示しました。

近年の中東情勢の悪化により、イスラム教徒に対する風当たりはさらに強まり、彼らはこれまでにないほどの生きづらさを感じています。信仰という大切なアイデンティティを隠さなければ平穏に暮らせない状況は、明らかな人権侵害ではないでしょうか。

異なる信仰をもつ人々が、安心して共存できる世界を実現するために、私は国連による宗教的人権の保護が急務だと訴えます。イスラム教に限らず、反ユダヤ主義者による襲撃事件など、現在は宗教に対する無知が不必要な憎悪を生み、さらなる衝突の原因となっています。このままでは、異教徒の排除という名の下で、多くの命が奪われていくかもしれません。

そのような悲劇に終止符を打つために、国連の力が必要だと考えます。国連は、人権保護活動を行う世界的機関であり、「世界人権宣言」は国際社会における人権思想の礎となりました。国家や宗教に属さず、中立かつ平等に信仰の自由を保障できる国際機関は、国連だけだと思います。ですから国連が、宗教に対する正しい知識を広め、心の自由を守ることが求められるのです。

信仰なしには、幸せに生きられない人がいます。世界人口の8割以上が何らかの宗教に属する現在、国連が信仰の自由を守ることは、世界平和を実現することに直結します。

問題が山積する世界で、様々な信仰を持つ人々が、憎しみあうのではなく、手を取り合うこと。そのようにして多様な人々が共存できれば、ありのままの自分を大切にしながら、平和に暮らせるはずです。

© United Nations Association of JAPAN